今年も当館恒例のムサビ・キッズプログラム「ミニチュア・チェアをつくろう─ムサビの近代椅子コレクションに触れる」を、普段は教職員限定の施設である図書館を会場に実施しました。
このワークショップでは、当館の近代椅子コレクション約400脚のなかから一脚をピックアップし、約1/5スケールのミニチュア・チェアを制作していきます。
今年は《ヘロン・ロッキングチェア》というゆりかごのように揺れる椅子のミニチュア化に挑戦しました。この椅子は、山形に拠点を構える国内有数の家具メーカー天童木工のデザイナー・技術者の菅澤光政氏によってデザインされました。日本の狭い住環境にも適したコンパクトで軽量なロッキングチェアは好評を博し、1967年の発売以来ロングセラーとなっています。
講師は本学工芸工業デザイン学科の卒業生で、現在はデザイナーとして活躍している秋山亮太さんです。はじめに秋山さんのデザインしたウレタンの椅子を紹介すると、大きなスポンジを組み合わせたような不思議なかたちに子どもたちは興味津々です。また、工芸工業デザイン学科の4年生の島村辰弥さんと3年生の滝田海桜さんにもサポートに入っていただきました。
制作の前には、当館コレクションのうち約250脚を収蔵展示している椅子ギャラリーの見学も行いました。普段は外から見られるだけなのですが、今日は特別に中に入り天童木工から発売されたいくつかの椅子を中心に座っていただきました。魅力的で個性的な椅子の数々に、子どもはもちろん保護者の方までお楽しみいただけました。
椅子ギャラリー見学のあとは、お待ちかねの制作に移ります。
今回制作した《ヘロン・ロッキングチェア》の制作は、細かな作業の連続でした。
1.パーツのMDFに木目シートを貼る
2.パーツ同士を接着する
3.座面+背面用の台紙と裏面用の台紙にそれぞれ布を貼る
4.布を貼った台紙を組み立てた椅子に接着する
木目シートを貼る作業はプラモデルをつくる際の作業にも似ていて、かたちにぴったりと合わせて貼ることが大切です。細かな指先の作業は数も多く大変でしたが、みなさん集中して貼っていました。
パーツ同士を接着する作業で、ミニチュア椅子の構造の丈夫さが決まります。歪みが生じないように、並行にパーツが並んでいるかや、ぴったりとポイント同士が接しているかなどに気をつけながら、保護者の方と協力して組み上げていきます。
布は、天童木工で販売しているシートの色を参考に、鮮やかだけど少し落ち着いた色調の5色を用意しました。実際の椅子はもこもこ、ふかふかとした柔らかな座り心地ですが、今回はそのかたちをMDFの切り出し技術によって再現しました。このもこもこのかたちにそって布をぴったりと台紙に貼っていきます。
組み立てておいた椅子のかたちに布の台紙をなじませるように貼りつけて完成です!
今回は秋山さんと学生スタッフが事前にレーザーカッターで切り出し準備してくださっていたパーツの強度がしっかりとしていたため、とても頑丈に仕上がりました。みなさんできあがったミニチュア・チェアにご満悦してくださって、本物の椅子とミニチュア・チェアを並べて写真撮影する方も。来年もワークショップを開催したいと考えていますので、ぜひ当館の情報をチェックしていただけましたら幸いです。