日ごろからそれぞれの表現領域で制作をしている美大生は、おのずと、作品を発表することにも身近に接しています。ですが、「展示をつくる」ことを実践的に学ぶ機会は案外多くありません。そこで美術館では、「展示をつくる」ことに主題をおいた制作ワークショップを2回にわたり実施しました。
1回目は展示台編です。講師は、当館での展覧会の際、壁の施工や什器の制作、さらには作品の取り扱いなど幅広い業務で展示を支えていただいている美術系施工集団square4の小滝タケルさん、本学の彫刻学科のご出身で、展示のプロフェッショナルです。補助には同じくsquare4の開田ひかりさん(空間演出デザイン学科出身)にも入っていただきました。
事前にご用意いただいたマニュアルをもとに、道具や材料の特質のお話も交えて展示台をつくるプロセスを一工程ずつ説明していただきながら、参加者の制作も進めていきます。
今回制作した展示台の主な作業工程は以下のとおりです。
1.切り出したシナランバーが歪まないようにボンドで材料同士を固定した後、スリムビスで固定する。
2.下地用のパテを板の継ぎ目とビスに打つ(1回目)。
3.1回目に打ったパテより幅広く下地用のパテを打つ(2回目)。
4.仕上げ用のパテを展示台の表面すべてに打つ。
5.削りすぎないように気をつけながら、紙やすりで全体が均一になるようにやする。
6.やに止めシーラーを台座全体にローラーで塗布。
7.白塗料を均一にローラーで塗装。一度塗った後、しっかり乾燥させ二度目の塗装を行う。
最初の木材を組み立てていく作業は展示台の仕上がりを決める大切な工程です。今回は仕上がりが30cm角になるよう、切り出した材料の微妙な歪みもここでできるだけ少なくなるよう寸法を測って組み立てていきます。
展示施工の作業に切っても切れない重要な工具である電動ドライバー。多くの美大生にとって馴染みのある工具ではありますが、使い方には意外とコツが要ります。
下地用のパテは粉と水分を配合してつくります。適度な粘り気のものを台の表面に打っていきますが、この作業が案外難しく、慣れない参加者の皆さんは小滝さんと開田さんに教えてもらい悪戦苦闘しながらもやり方を感覚で覚えていきます。
やすりの力加減も大切です。あまり力を入れすぎると1箇所だけに力が入ってしまい、表面を均一にやすることができません。面が同じ力加減でやすれるよう、台の表面に対して水平に、そして辺に対してまっすぐにやすりを動かします。
初想定していたより大幅に時間が延びてしまい、完成まで辿りつかなかった参加者の方もいましたが、それぞれきりのよい工程まで作業し、残りは持ち帰って完成させることになりました。それでも粘り強く集中して完成まで漕ぎ着けた方もいました。
参加者の皆さんには、展示台ひとつとっても制作のための作業工程が意外と多く、完成までにいくつもの大切なポイントがあることを体験していただきました。これから課題や卒業制作、さらには卒業後に展示をする機会にこのワークショップでの経験が役に立つことがあれば嬉しく思います。