当館恒例のムサビ・キッズプログラム「ミニチュア・チェアをつくろう─ムサビの近代椅子コレクションに触れる」を、4年ぶりに対面で実施しました。今年は初の、普段一般開放されていない図書館が会場です。
このワークショップでは、当館の近代椅子コレクション約400脚のなかから一脚をピックアップし、約1/5スケールのミニチュア・チェアを制作していきます。
今年は《トリップトラップ》という、1972年の発売以来世界中で愛され続けている、生後すぐの赤ちゃんからおとなまで使うことのできる椅子を選びました。ノルウェーのデザイナーで、独創的なバランスチェアを数々生み出しているピーター・オプスヴィックによるデザインです。参加者のみなさんの中には、普段からこの椅子を使用しているという方もいました。
講師は本学工芸工業デザイン学科を卒業され、現在はデザイナーとして活躍している秋山亮太さんです。ワークショップの冒頭では、秋山さんご自身の普段の制作についてご紹介いただきました。また、同学科4年生の田中文さんと和田真央子さんにもサポートに入っていただきました。
制作の前には、当館コレクションのうち約250脚を収蔵展示している椅子ギャラリーでワークシートを行いました。普段見たことのないおもしろいかたちの椅子や、人気の漫画で見かけたことのある椅子に参加者のみなさんは興味津々です。
椅子ギャラリーの見学のあとは、お待ちかねの制作に移ります。
今回制作した《トリップトラップ》は、主に3工程で進めていきました。
1.各パーツをやする
2.パーツ同士を接着する
3.着色をする
やする作業では、本物の《トリップトラップ》をよく観察して、背もたれや脚、座面など、各パーツの角の丸みを確認しながら進めていきました。地味な作業ではありますが、本物らしさを出すにはとても重要な作業です。実際の椅子でも、角が取れていることで安全性や座り心地が保たれています。
部材を接着する作業は、椅子のかたちができあがる大切な作業です。シンプルなパーツによる構造であるがゆえにうまく接着できないと歪みが生じます。そのため、ワークショップでは枠を用意し、その枠に脚のパーツをはめながら接着していきました。
着色では、現在販売されているカラーバリエーションを参考に、ナチュラル/ソフトミント/セレーヌピンク/サンフラワーイエロー/フィヨルドブルーの5色を準備しました。
完全に接着剤が硬化しないなかでの着色は、ミニチュア・チェアを持つ力加減など想像以上に大変な作業でしたが、みなさんとても集中し、仕上がりまで丁寧に作業していました。
完成です!
どの人も日常的に椅子を使っているものの、その構造や制作過程に触れる機会は少ないことと思います。
このワークショップが参加者のみなさんにとって、椅子はもちろん、デザインやものづくりに興味を抱く機会となっていましたら嬉しい限りです。