2016年10月17日(月)-11月12日(土)
鈴木久雄―彫刻の速度
美術館 終了
空間に張り巡らされ、そして突き抜ける鋼(はがね)の大型彫刻。鍛造と溶接の反復により作られた数千の部材は、明晰な思考のもと確かに構築され、巨大な鍛鉄の彫刻として「自(おの)ずからなる速度」を顕わす。鉄による「時」と「距離」とを行き来する彫刻作品を中心に展示し、鈴木久雄の彫刻と現実への関わりをたどる。
画像:鈴木久雄《環距離》2011年(撮影:山本糾)
- 会期
- 2016年10月17日(月)-11月12日(土)
- 時間
- 10:00-18:00(土曜日、特別開館日は17:00閉館)
- 休館日
日曜日、祝日 ※10月30日(日)は特別開館
- 入館料
無料
- 会場
武蔵野美術大学美術館 展示室2、アトリウム1、2
- 主催
武蔵野美術大学 美術館・図書館
- 協力
武蔵野美術大学 共通彫塑研究室
このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館では「鈴木久雄 ―彫刻の速度」を開催いたします。
彫刻家・鈴木久雄氏の鉄による彫刻作品を中心に、1980年代の初期鉄彫刻から現在に至るまで代表的な作品約30点を紹介し、距離と時間との関係によって生み出される彫刻の速度をテーマに、鈴木氏の彫刻に対する思考とその実践をたどります。
本展では、数千からなる鍛造ステンレス鋼の部材によって構築された大型彫刻の《距離・Irish Distance》(2006年)や《散距離》(2008年)、《交叉距離》(2009年)、《環距離》(2011年)を中心に、展示室から吹き抜けのアトリウム空間全体へと拡張するダイナミックな展示を行います。鍛造と溶接の膨大な作業によって制作された鉄パーツに刻まれた「時間」、それを構成することで空間に現れた「距離」、展示空間は巨大作品がつくりだす彫刻の原質を巡る空間へと変様します。
その他にも1980年代の初期鉄彫刻から近作まで、鉄や石といった素材との対話あるいは対峙を通じて展開してきた「幾何形体」「風化儀式」「塔体」「木の現象」「人型距離」シリーズにおける一連の作品を展示し、鈴木氏における鉄彫刻の変遷を紹介します。
空間全体に張り巡らされた巨大彫刻と各所に配された代表的な鉄彫刻によって、鈴木氏の彫刻世界を体感すると同時に、存在感ある鉄彫刻の魅力に触れる機会となります。
見どころ
出品作家紹介
鈴木 久雄(すずき ひさお)
1946年静岡県生まれ、1965年武蔵野美術大学 造形学部美術学科彫刻専攻入学、1970年同専攻卒業。1984年本学共通彫塑研究室助教授着任、1989年同研究室教授。
在学中から行動美術展などで石による作品を発表。70年代ユーゴスラビアやイタリアに滞在し地元の石を使って野外彫刻を制作。帰国後は公募展や団体展などで野外彫刻を中心に発表を重ね高い評価を得ると同時に、東京都美術館をはじめ千代田区、江戸川区などの公共空間に石彫作品が設置される。
80年代前半から石だけでなく鉄による作品も制作。鍛鉄を城壁の石組みのように積み上げた重厚な鉄作品シリーズは、東京国立近代美術館、和歌山県立近代美術館、大原美術館などに収蔵される。また同時期、石や鉄を使い自然条件をも取り入れた「風化儀式」シリーズなどを野外彫刻展に出展し、数々の賞を得る。
90年代半ば以降ステンレス鋼材の鍛造と溶接によって作られた無数のパーツを組み合わせ、膨大な鍛造によるパーツから構築した緻密でダイナミックな大型彫刻を制作。2003年からアイルランド、オランダ、スロバキアでの個展を開催。帰国後は鍛造ステンレス鋼の薄板を六角柱状に組み合わせたパーツによる空間構成的な巨大彫刻を発表する。2007年には第35回中原悌二郎賞を受賞。以降、美術館やギャラリーで積極的に新作を発表し、新たな鉄彫刻の可能性を示す。