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展覧会・イベント

2024年9月2日(月)-10月19日(土)

2024年度美術館休館中特別企画シリーズ ムサビ版「驚異の部屋(ヴンダーカマー)―眠らない獅子計画

vol.3 木活字の美 
——慶長期木版印刷術の粋・「嵯峨本」復元プロジェクト

美術館 これから開催

本学学生・教職員限定公開

武蔵野美術⼤学美術館は、2011年のリニューアルオープンから13年余りを経て、2024年5⽉から2025年夏頃までの間、空調改修⼯事のため、一部の展覧会開催期間を除いて休館する予定です。
休館中、美術館・図書館・民俗資料室の3セクションによる5本の展覧会を、学生・教職員限定で、図書館展⽰室を中心に開催いたします。

会期
2024年9月2日(月)-10月19日(土)
時間
会場1:図書館展示室 10:00-17:00 
会場2:図書館大階段の展示は、図書館の開館時間に合わせてご鑑賞いただけます。
休館日

日曜日

入館料

無料
本学学生・教職員限定公開

会場

会場1:図書館展示室
会場2:図書館大階段

主催

武蔵野美術大学 美術館・図書館

監修

寺山祐策(武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科教授)

お問い合わせ

お問い合わせフォームからお送りいただくか、下記までお問い合わせください。

武蔵野美術大学 美術館・図書館
電話:042-342-6003
Eメール:m-l@musabi.ac.jp

明治初年に西洋式の活版印刷術が本格的に移入されるまで、わが国で刊行された書物の大半は、金属ではなく木を版材としていました。中世から近世を通じて広く行われた「整版」は、一枚の板に彫られた文字や絵を版にして摺られたもので、長きにわたり日本の書物印刷の主流をなしてきました。近世初期には、徳川家康の命で鋳造された銅活字による駿河版や、西洋伝来の金属活版術によるキリシタン版など、一部に例外的な事例も現れますが、その他の刊本は概ね、木を材とする印刷方式によるものであったといえるでしょう。
 一方、木材を用いて活字を作り、それらを組み合わせて印刷された活字本も少なからず存在しました。文祿年間(1592—96)から寛永年間(1624—44)にかけて、わずか半世紀ほどの間に刊行された「古活字版」もそのひとつです。全角の活字を基本単位とする点では、明治以降に普及した和文の金属活版と同様ですが、肉筆に近い活字字形や倍角を利用した連続活字を採用するなど、活字の書体や形式に種々の工夫を凝らすことで、活字本でありながら写本と見紛うかのような、優美な版面を実現しました。
 このような古活字版の代表格が、慶長期(1596—1615)に京都の豪商・角倉素庵(1571—1632)が刊行した「嵯峨本」です。わけても、通称「光悦謡本」(本展では「嵯峨本謡本」とする) と呼ばれる観世流の謡本は、慶長から寛永期を代表する能書家・本阿弥光悦(1558—1637)や素庵自身の書風に近い木活字に、俵屋宗達の関連も指摘される表紙その他の唐紙など、慶長期の書画の影響を色濃く反映した造本によって、わが国で最も美しい刊本のひとつとされてきました。木と和紙を媒材とした水性木版による印刷は、油性インキと金属による活版印刷とはまるで異なる、独自の規矩と流風を今に伝えています。
 しかし、今日では嵯峨本をはじめとする古活字版の木活字や摺刷盤の多くは失われてしまいました。そのため、光悦や素庵が制作に関与したとされる嵯峨本も、能楽史や書誌学の領域における従来の研究手法では、その造形美を支える技術的背景の解明は困難な状況にありました。
 2016年に始まった「嵯峨本復元プロジェクト」は、これらの先行研究の成果を踏まえながら、摺師、彫師、唐紙師、経師ら、現在も京都に息づく職人の技術を借りて、造形学的な視点から嵯峨本謡本の美の解明を目指しました。その成果の一端は、2018年に当館で開催した「和語表記による和様刊本の源流」展および同展図録にて公開したものの、嵯峨本謡本の完全な復元には至らず、完成にはさらに五年の歳月を要しました。本展では、およそ400年を経て復元された嵯峨本謡本と、その制作過程を辿るなかで明らかとなった古活字版の技術的諸相を紹介し、木版印刷ならではの柔らかな印圧に支えられた、しなやかな美のかたちに迫ります。

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