2024年11月4日(月)-12月7日(土)
2024年度美術館休館中特別企画シリーズ ムサビ版「驚異の部屋 」―眠らない獅子計画
Vol.4 彫刻の威力
——戸田裕介、冨井大裕 二人展
美術館 終了
本学学生・教職員限定公開
武蔵野美術⼤学美術館は、2011年のリニューアルオープンから13年余りを経て、2024年5⽉から2025年夏頃までの間、空調改修⼯事のため、一部の展覧会開催期間を除いて休館する予定です。
休館中、美術館・図書館・民俗資料室の3セクションによる5本の展覧会を、学生・教職員限定で、図書館展⽰室を中心に開催いたします。
- 会期
- 2024年11月4日(月)-12月7日(土)
- 時間
- 10:00-17:00
- 休館日
日曜日
- 入館料
無料(学生・教職員限定)
- 会場
武蔵野美術大学 図書館展示室、図書館大階段ほか
- 主催
武蔵野美術大学 美術館・図書館
造形の高みに、低く屈んで構え、そして深く彫りつつ、向かうために。
現代における「彫刻」の意味を問い直す、展観をお届けしたい。
「彫刻」。それは、かつて世紀末ドイツの詩人、リルケが喝破したように、「ギリシャ人は、自らの肉体を、彼らが初めて見る風景として発見した」。かの天才ミケランジェロは、「石に耳を傾けて、その中に元から在ったものを、私は彫り出すだけだ」と言った。(註)
最も偉大な彫刻とは「彫刻とは何か?」という、その原義、本来の意味を私ども、見る者に突きつける仕事である。
一方、私どもは多く、西洋の近代=この、「自我」を発見したと誤解するユニークな誤謬の時代に、毒されても来た。曖昧で、ある意味いい加減な、造形の歴史(だけで無く、生活もまた社会も、日本においては同断である)をになって来たのである。
戸田裕介は、勇猛・ユニークで、特異な浪漫主義的な物語る彫刻によって、その「日本の近代以来の、いい加減な、誤謬の造形観」をひっくり返す、果敢で危険な試みに挑んで来た。それは、戦後アメリカ流の「造形とは見えるものだけであって、それ以外を示唆・指示しない」という、一種如何にも表面上は正鵠に思えるような結論に達した、現代彫刻の安易なる「開き直り」への意義申し立てでもあった。
そして冨井大裕もまた、西欧20世紀が、それなりに悩みながら辿って来た「コンセプト=思想か、それとも物体・物質・オブジェか?いや、もしかしてイメージか?」という、三律背反?の追いかけっ子のような愚鈍なジレンマを、叡智をもって巧みに、肉体をもって飄逸に、反転させる妙技を、披露して来た。
『いきの構造』の二人。リリシズム=詩情、という名の戦意。「いき」とは、下劣な哲学的認識では無い。軽やかでお洒落な、しかも真摯で奇襲的な、捨て身の行為である。
この共に、最も日本的な二つの、「いき=粋=意気」の構造でもって、西洋近代の似非造形意識に毒されている、現代日本の彫刻界を糺す、展観をお届けする。
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註:記憶で書いているが、『現代世界文学全集06』(新潮社、大山定一訳)、『神さまの話』(新潮文庫、谷友幸訳)から引いた。『いきの構造』とは、美大生必読の、昭和初期の伝統論争時代の名著、九鬼周造の同著(岩波文庫)。自我の発見の誤謬は、森有正から。
戸田裕介 TODA Yusuke
1962年、広島県生まれ。1990年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了。1995-96年、日航財団(現JAL財団)「『空の日』芸術賞」(1994年)、同財団海外派遣芸術家として渡欧(イタリア、フィレンツェ・イギリス、ロンドン)。1996年、Royal College of Art, Sculpture School, Post Experience Programme(イギリス)。2000年、国際交流基金 芸術家海外派遣フェローシップ(ドイツ)。同年、武蔵野美術大学造形学部共通彫塑研究室着任、現在同研究室教授。「現代日本彫刻展(UBEビエンナーレ)」、「神戸須磨離宮公園現代彫刻展」などの野外彫刻展を筆頭に、国内外のさまざまな彫刻コンクールで受賞を重ねる。国内をはじめ、アメリカ、インド、ロシアなど海外6か国7都市で滞在制作、彫刻を設置。
冨井大裕 TOMII Motohiro
1973年、新潟県生まれ。1999年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了。2015-2016年、文化庁新進芸術家海外研修制度(アメリカ、ニューヨーク)。2018年、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科着任、現在同学科教授。2011年、「MOTアニュアル2011 Nearest Faraway|世界の深さのはかり方」東京都現代美術館、「ヨコハマトリエンナーレ2011─OUR MAGIC HOUR 世界はどこまで知ることができるか?─」横浜美術館ほかをはじめ、数々の展覧会に参加。本年、「PRIZE for LEADING CHARACTER 2024 DSF CULTIVATION AWARD」を受賞。
彫刻と彫刻以外のものの「間(あわい)」に目を向けるグループ「SCREWDRIVER」としての活動、実験スペース「壁ぎわ」と「はしっこ」の世話人をはじめ、アーティスト主体による展示・イベント等も精力的に行う。
見どころ
出品作品
展覧会場風景
会場撮影:柳場 大