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2021年08月26日

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「美大生におすすめの本20選」Vol.7:石塚英樹准教授

掲載日:2021年5月17日(月)

図書館

ムサビの先生方がお勧めする”美大生なら読んでおいてほしい本”、
第7回目は、視覚伝達デザイン学科研究室の石塚英樹先生です。

石塚英樹准教授(視覚伝達デザイン学科)

石塚英樹准教授(視覚伝達デザイン学科)

 大学に入学するまでは、図書館を利用することがほとんどなかったので、図書館内で本を読むことや、読めるかどうか分からない本を借りることに、なんとなく緊張したのを覚えています。また、閲覧室で分からないなりに拾い読みをしていると、徐々に内容が分かってくる経験や、複数の本をつまむ様に読む内に、その分野の概要が見えてきたことに、ちょっとした感動を覚えました。一冊の本を余すところなく順番に読んでいくのも大切な読み方の一つですが、図書館を歩きながらタイトルだけを読んで回ったり、目についた本を拾い読みしていくことも、図書館での本の読み方だと思っています。
 webブラウザのブラウザ(browser)には、「拾い読みをする人」という意味がありますが、現在ではweb、SNS、本のネット販売、ブックカフェなどを通して、さまざまな形式の情報と読み方が提供されています。しかし、図書館という現実の空間で、自分なりの読み方を見つけていくことは、学生の時にしか出来ないとても豊かな経験だと言えます。引用をたどってみる、興味のある本を全て借りてみる、図版だけを見て回る、目次だけを読んでみるなど、一冊の本を順番に全て読むという読み方を一旦忘れて、まずは図書館で自分なりの読み方を探して見るのも面白いかもしれません。

〈石塚先生のおすすめ本〉

(Revide and Expanded ed)
ジョセフ・アルバース著, Yale University Press, 2006
※『Interaction of color』 翻訳書
ジョセフ・アルバース著、永原康史監訳、和田美樹訳, ビー・エヌ・エヌ新社, 2016
ジョセフ・アルバースのInteraction of Colorは、シルクスクリーンによって制作された色彩のスタディー(実験作品)約80点に、解説書が付属したボックス形式の本。スタディーの多くは、アルバースの授業で制作された学生作品がベースになっている。つまり、この本はアルバースの色彩教育の成果であるのと同時に、色彩研究でもあり、アルバースの作品とも言える。一つ一つのスタディーは一見単純だが、何度も見ることで、作品に利用されている様々な知覚効果が分かってくるのが面白い。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ著、高橋義人〔ほか〕訳, 工作舎, 1999
ドイツの詩人ゲーテが、1810年に発行した色彩論を完訳した本。完全には読み切れていないが、なるべく近くに置いて、何かあるたびに読む様にしている。様々な作家や科学者が、ゲーテの試みに共鳴した作品や文章を残している。そうした作品や文章と出会うたびに該当する箇所を探したり、読み直しをするのが楽しい。

藤幡正樹著, 美術出版社, 1997
コンピュータ・モニター上の色彩論をテーマにした本。表紙のCD-ROMには、画像データの色を分析するためのアプリケーションが収録されている。紙やキャンバスの様に、モニターもメディアであり、モニター上の色彩論が必要になることに気づかされた。今となっては見当違いかもしれないが、表紙についたCD-ROMに新たな本の形式を予感した。

日本色彩学会編, 朝倉書店, 1991
タイトル通り色彩の事典。インターネットがなかった当時は、何か分からないことがあると「ググる」様に、この本を引いていた。事典なので全ては読んではいないが、常に「ブラウズ(拾い読み)」をしていた本。

アルベルト・アインシュタイン、レオポルト・インフェルト著, 石原純 訳, 岩波書店, 1963
物理学の思考がどのように発展してきたかを記述した本で、数式は一切出てこない。この本の中で「科学の根本的な思考の大多数は本来簡単で、大抵は誰にもわかる言葉で言い表せるものです」とあるように、数式によって記述される物理学が、日常的に使用する言葉と思考によって語られていく。どんなに難しい分野でも、根本的な思考を見つけることが出来れば、理解できる可能性があると思わせてくれた本。

前田ジョン著, Rizzoli, 2000
(翻訳書)
前田ジョン著、大野一生訳, デジタローグ, 2000
前田ジョンのプログラムによる作品を、同氏の編集とデザインによってまとめた本。描かれた形を見て、どのようなプログラムで書かれているのかを想像し、そのプログラムから作者の考えを読み取る、という形式で読んでいる。ある意味、自分でプログラムを書くようになってから読めるようになった本。

前田ジョン著, MIT Press, 1999
前田ジョンが執筆とデザインをしたプログラムの教科書。プログラムの書き方を学ぶ本ではなく、プログラムを通して、コンピュータの性質とそこから生まれる造形を学ぶ本だと理解している。デザインの基礎造形には多くの素晴らしい試みが存在し、プログラムのアルゴリズムには様々な造形的な思考が隠れている。この両者を結びつけようとした本として参考にしている。

西垣通 編著訳, NTT出版, 1997
インターネットやGUIなど、現在のコンピュータ環境を生み出すもとになった論文を集めた本。終戦の年に発表されたヴァネヴァー・ブッシュの論文「われわれが思考するごとく」から始まる。この本に書かれている内容のほとんどは、技術的には実現されているが、そこで目指した世界や思想が実現されているとは言えない気がする。というより、パーソナルコンピュータを介して表れてくる思想は、終戦時と現在では全く別なものになった、と言った方がいいのかもしれない。

Alan Curtis Kay著、鶴岡雄二翻訳, 中央公論新社, 1992
スマートフォンを含む現在のパーソナルコンピュータに、大きな影響を与えたアラン・ケイの論文集。教育におけるコンピュータの役割は、この本の中で重要な要素になっている。オンライン授業をはじめ、学校という場所にコンピュータが不可欠になった現在、もう一度読み直したいと思う本。

シーモア・パパート著、奥村貴世子訳, 未來社, 1995
著者のシーモア・パパートは、コンピュータが高価で珍しかった1970年代に、プログラムを使用した子供向けの教育ワークショップをおこなっている。コンピュータが正解を判断するコンテンツ形式の学習や、プログラムの習得が目的ではなく、プログラムを利用して図を描く経験が、子供の思考をどう育むのか、プログラムを書くという経験が持つ教育的役割について語った本。

中沢新一著, 青土社, 1985
第II章のIV節に掲載されている「ゲームフリークはバグと戯れる」を読むために図書館で借りた本。1980年代に流行したアーケードゲーム「XEVIOUS」をモチーフに、プレイから物語が発生する原理と、プレイヤーが何と対話(インタラクション)しているかについて語った文章。ゲームに限らず、コンピュータというメディアでメッセージを作るための原理として参考にしている。

セルゲイ・ミハエロウィッチ・エイゼンシュテイン著、佐々木能理男編訳, 角川書店, 1989
エイゼンシュテインのモンタージュに関する解説はよく眼にしていたが、本人の著書は読んだことがなかったので、もとに当たるために読んだ本。モンタージュは技法として解説されることが多い。しかし、この本の中でモンタージュは、技法というより表現の原理として扱われている。エイゼンシュテインは、モンタージュという原理をもとにして、様々な表現技法を展開させたと個人的には理解している。

J.J.ギブソン著、佐々木正人〔ほか〕監訳, 東京大学出版会, 2011
人が物を動かす時、体を動かすのと同時に、動かしている物の情報と自身の体の情報を読み取っている。運動は対象と体を動かすための手段であるのと同時に、対象と身体の情報源だと言える。この運動に含まれる情報に、デザインにおけるインタラクションを考えるヒントがあると思っている。

佐藤雅彦、齋藤達也著, 美術出版社, 2014
指を置いて読む本。「生態学的知覚システム」の示唆を借りれば、指を置いて読むということは、見るという動作と触るという動作を組み合わせて、読むという動作を組織化していると言える。この組織化の方法によって、読むことに含まれる情報が変化するということだろうか。個人的には、1990年代にコンピュータをモチーフにデザインを展開させていた著者が、2000年付近から身体とメディアの関係に注目した作品を制作している点が興味深い。

スティーブン・レビー著、服部桂訳, 朝日新聞社, 1996
前述した「Design By Numbers」の参考文献をたどって読んだ本。生物の成長や進化から規則を見つけることが出来れば、その規則は、プログラムによって動きや変化として表示することが出来る。このような、規則の組み合わせによる表現を通して、生物の仕組みを解き明かそうとする試みが紹介されている。この本に書かれている規則を、プログラムに起こしてモニター上に再現するのが楽しかった本。

J.J.ギブソン著、古崎敬〔ほか〕共訳, サイエンス社, 1985
大学院の教科書として使用していた本。自分が担当する章を読み、その内容をもとに身の回りを観察した上で、授業内で発表と議論を行った。いわゆる輪読の形式で読んだ本。観察者にとっての光、光の変化が持つ情報、光の中で行う知覚的探索など、光とインタラクションと意味を考える上で常に参考している。

ブルーノ・ムナーリ作、須賀敦子訳, 至光社, 1997
人工生命、特にL-systemのプログラムを知ってから読み直した時、デザインとコンピュータの理想的な関わり方を感じた本。ムナーリがL-systemを参考にしていたかは分からないが、コンピュータの技術を表現に利用するのではなく、コンピュータの思考(プログラム)を造形の原理としながら、物作りの思考と身体性を段階的に拡張させている。そして、物作りをより豊かに展開させるというムナーリ自身の思考によって、一冊の本として自分の作品になっているのだと思う。

「読めない本」シリーズ

ブルーノ・ムナーリ作
ページをめくるという単純な動きの中に、様々な変化が隠れていることを体験させてくれる本。「生態学的視覚論」の記述方法を借りれば、ページをめくると正方形は台形に変形していき、最終的には縮小され一本の線として縁(ふち)となる。つまり、近い面は縁として遠い面となり、幅が奥行きになる。一方、反対側の縁では、縁として遠かった面が近い面となり、それまで隠れていた面が露わになってくる。

ブルーノ・ムナーリ作、谷川俊太郎訳, フレーベル館, 2009
1st American ed.
ブルーノ・ムナーリ作, World Pub. Co., 1969
個人的にはムナーリの「読めない本」に具体的な空間と物語を与えると、「霧の中のサーカス」になると理解している。「生態学的視覚論」と「読めない本」と「霧の中のサーカス」の関係に、知覚とデザインの連続性を感じる。

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