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大辻清司アーカイブ所蔵フィルム目録シリーズ『大辻清司アーカイブ フィルムコレクション』 第6巻『クロス・トーク/インターメディア』を刊行しました

掲載日:2022年4月7日(木)

総合 美術館 図書館

このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館は、「大辻清司アーカイブ」所蔵フィルム目録シリーズ『大辻清司アーカイブ フィルムコレクション』の第6巻『クロス・トーク/インターメディア』を刊行しました。
写真家大辻清司(1923―2001)の創作活動をほぼ網羅する、当館所蔵の特別コレクション「大辻清司アーカイブ」。2008年の寄贈受入より整理研究に着手し、その成果を「大辻清司フォトアーカイブ:写真家と同時代芸術の軌跡1940―1980」(2012)や、プリント作品1,613点に関する目録『大辻清司:武蔵野美術大学 美術館・図書館所蔵作品目録』(2016)等により公開してきました。
2017年からは『大辻清司アーカイブ フィルムコレクション』と題する撮影フィルム原板に関する目録シリーズの刊行を開始。常に写真表現を探究し、写真の可能性を探っていた大辻の撮影フィルム1コマ1コマには、卓越した撮影技術と造形的思考に裏打ちされた表現が内包されています。それらのイメージは必ずしも紙焼きされたプリント作品として存在するわけではありませんが、フィルムを1コマ単位でつぶさに検証することは写真表現の在り方を探る契機となり得ます。

第6巻『クロス・トーク/インターメディア』(2022年3月刊行)

1969年2月に国立代々木競技場第二体育館で開催された「クロス・トーク/インターメディア」は、アーティストとエンジニアの協働、アートとテクノロジーの結合を目指した、わが国初めての大規模なインターメディアの祭典です。このイベントの成功は、翌年開催される日本万国博覧会EXPO ’70へのひとつの試金石として、人々の期待や関心を高めることにもつながりました。「クロス・トーク/インターメディア」は、芸術体験の環境化、メディアの多様化、観衆の能動的参加など様々な観点を持つ現代美術の足掛かりのひとつとなったイベントとして評価されますが、全貌を記録した動画や音源の存在は確認されておらず、これまで具体性をもった検証は進んでいませんでした。
美術出版社の依頼による『美術手帖』1969年4月号の特集「インターメディアとはなにか」のために、会場でのリハーサルに立ち会った大辻の撮影フィルムには、イベントの生成過程やアーティストらの演奏風景、組みあげられた最先端電子機器の数々が記録されており、イベントの子細を知るうえで貴重なドキュメントといえます。また、未知の視聴覚体験を実現するべく試行錯誤するアーティストやエンジニアの表情、シークエンスで捉えられた実況シーンのダイナミズムなど、大辻ならではの優れた写真表現としても評価できる映像です。

(巻頭には写真評論家大日方欣一、電子音楽研究者川崎弘二による論考を収録)


『大辻清司アーカイブ フィルムコレクション』の既刊

  • 第5巻『具体』(2021年3月刊行)
  • 第4巻『1975』(2020年3月刊行)
  • 第3巻『アトリエ訪問』(2019年3月刊行)
  • 第2巻『人間と物質』(2018年3月刊行)
  • 第1巻『舞台芸術』(2017年3月刊行)

「大辻清司アーカイブ」に関する図録や目録は、少部数に限り販売しています。カタログ通信販売ページはこちらより。


「大辻清司アーカイブ」概要

「大辻清司アーカイブ」は、紙焼きされたプリント作品のほか、撮影フィルム原板、直筆原稿などの紙資料、作品掲載誌、旧蔵書、撮影機材や暗室用品に至るまでの、写真家大辻清司の創作活動をほぼ網羅するコレクションです。大辻は自身の作品制作と並行して、出版メディアから要請された撮影仕事を通じ1950年代後半以降の日本の芸術動向をたびたび撮影。そのドキュメントの多くはプリント作品としては現存しないため、コレクション資料群を包括的かつ横断的に活用したフィルム原板1コマ単位での綿密な調査研究により大辻の仕事を体系的に公開することで、写真史及び日本戦後美術史の研究深化への寄与を目指します。

当館所蔵「大辻清司」プリント作品

当館が所蔵する大辻清司のプリント作品1,613点の作品データを公開しています。
(作品画像は大学キャンパス内の限定公開)


大辻清司(おおつじ・きよじ)

写真家。1923年東京生まれ。2001年没。1940年代末にシュルレアリスムの傾向を色濃く窺わせるオブジェの写真作品を発表し創作活動を開始。1950年代にはインターメディアの前衛芸術グループ「実験工房」に参加。さまざまな芸術ジャンルのアーティストと交流し、20世紀末まで約半世紀にわたり制作と思索の営みを続けた。同時代芸術の貴重かつ膨大なドキュメントを撮影したことでも知られる。長年携わった写真教育の場でも重要な業績を残し、高梨豊や畠山直哉をはじめ多くの門下を輩出した。また、写真というメディアの特性と新しい表現への可能性を考察した優れたエッセイを数多く執筆。主著に『写真ノート』(美術出版社、1989)。代表作に《オブジェ》(1950)、《美術家の肖像》(1950)、《陳列窓》(1956)、《無言歌》(1956)、《東京むかし》(1967)、《日が暮れる》(1975)ほか。

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