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民俗資料室ギャラリー展示28 紙・木・藁にみる祈りの造形 展覧会先行オンラインイベント 昔から今につながる疫病退散

掲載日:2020年11月10日(火)

民俗 レポート

 民俗資料室では、展覧会「紙・木・藁にみる祈りの造形」の先行イベントとして「昔から今につながる疫病退散」をオンラインのライブ配信により開催しました。國學院大學の飯倉義之先生を講師に迎え、コロナ禍の鎮静化への願いもあって話題になった妖怪「アマビエ」や「アマビコ」についてのお話や、民俗資料室に収蔵されている疫病退散に関連する資料の解説をしていただきました。約50人が参加し、先生の軽妙なトークに触発されたのか、最後には多くの質問をいただきました。

 前半は飯倉先生がスライドを使いながら、日本の疫病の民俗誌を振り返りました。古事記や日本書紀などの神話から、かつては病が「異形のこの世ならぬモノ」として捉えられていたこと、だからこそ妖怪などの異界の存在は病への対抗策を持っているはず、と人々によって考えられたことが説明されました。また、夏の疾病流行を抑える祈りを祇園社に捧げたことが京都の祇園祭の始まりになったことも紹介されました。

 現在のコロナ禍の中で流行した妖怪「アマビエ」については、瓦版に描かれた「予言と共に姿を写せと告げる存在」で、「くだん」や「神社姫」などの「予言獣」の仲間だと考えられること、アマビエが実はアマビコを写した、もしくは写し間違えたものである可能性が指摘されていることの説明がありました。そして現代では、アマビエが色を自由に塗ったりアレンジができることが、キャラクターとして定着し、広がる要因になった可能性が指摘されました。

 5分間の休憩後は、飯倉先生と本学民俗資料室の松本美虹学芸員により、民俗資料室の収蔵品の実物を使った解説がなされました。「猩々」(滋賀県草津市)や「猿ぼぼ」(岐阜県高山市)、「赤ベコ」(福島県会津若松市)など、郷土玩具には赤いものが多い点について、赤が招福や魔除の色になっていること、血と同じ色であることで生命や危機の表現に利用され、生物としても根源的に注目してしまう色なので多用された可能性があることなどが説明されました。

 また、参加者からの「アマビエなどの予言獣が『いい予言』をするかどうか」という質問については、「もともとこうした妖怪には摺物や瓦版を売るための話題性という面があったため、残念ながら人々が注目しない『平和ないい予言』は少ない」との回答がなされました。明治時代の記録には、摺物の押し売りが来て困ったと書かれたものもあるそうです。

 アマビエの疫病退散の効果を信じてコロナ禍が収束に向かうことを期待し、民俗資料室では今後もオンライン・オフラインの様々なイベントを開催できればと考えています。みなさまのご参加をお待ちしております。

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武蔵野美術大学 美術館・図書館 民俗資料室
電話:042-342-6006
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