「民具これなーんだ?―民俗学者・宮本常一が美術大学に遺した民具コレクション」展関連イベント
レポート デッサンしよーぜ!
民俗 レポート
日時 2026年6月20日(土)
- 時間
- 13:30-15:00
- 会場
- 武蔵野美術大学 美術館・図書館 展示室6
- 定員
- 20名
- 対象
- 一般(小学生以上)
- 参加費
無料
- 講師
- 鈴木康広(本展監修、本学空間演出デザイン学科教授)、加藤幸治(本展監修、本学教養文化・学芸員課程教授)
- 主催
- 武蔵野美術大学 美術館・図書館
お問い合わせ
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武蔵野美術大学 美術館・図書館 民俗資料室
電話:042-342-6006
Eメール:m-l@musabi.ac.jp
当館では、2026年6月15日〜8月1日に開催した「民具これなーんだ?―民俗学者・宮本常一が美術大学に遺したコレクション」展の関連イベントとして、一般向けの教育普及プログラム「デッサンしよーぜ」を開催しました。
本プログラムは、「民具これなーんだ」展の監修者の一人である鈴木康広先生によるもので、鈴木先生が総合指導を務めるNHKの「みたてるふぉーぜ」の人気コーナー「デッサンしよーぜ」をもとにしたワークショップです。
“デッサン”といっても、目の前にあるものを正確に描くのではなく、今回は「見立て」て描いてみることがテーマです。日常の中でも、見間違いや、ぼんやりとながめていたらふと違うものに見えてきたり、影や模様、液体のあとなどが何かに見えてくるという経験は、皆さんされたことがあると思います。今回は、民具をじっくり観察していく中でふと見えたものや、だんだんと見えてきたものを見立てて描いてみました。
まずはじめは、講師の鈴木先生よりお話をしていただきました。鈴木先生の「見立て」のきっかけは、飛行機の窓からみた船が、海を開いていくファスナーに見えたことだったそうです。ご自身の制作や「見立て」についてのお話を伺いながら参加者の「見立て」の目を開いていきます。
お話を伺った後は、「見立て」のデッサンを実践してみます。初めは、全員で同じ民具を囲んで描きました。テーマの民具は、全体が黒く光沢があり、上部は丸い形、真ん中より下で少しくびれがあり、裾は広がっている不思議な形です。ある角度から見ると穴が空いているけれど、別の角度からは見えない、そんな構造も持っています。それぞれの場所からじっくりながめ、約10分ほどで描いていきました。
ちなみに、参加者にはこの民具を含め今回のイベントを通して見る民具が、何であるか、その用途、などは一切明かされません。人によっては見たことがある民具もあれば、全く見慣れない民具もあったことと思います。
せっかくの機会なので、描いたあとは、書画カメラ・プロジェクターで大きく映しながら一人ずつ発表していただきみんなで共有しました。講師の鈴木先生、加藤先生からもそれぞれコメントをいただきました。
穴が見える角度から見ていた方々からは、「木のうろ」や「リコーダーの穴」「地底人のカブト」「鎧のカブト」といった見立てが、穴が見えない角度から見ていた方々からは、「フライパンのふたの取手」や「水が垂れてきている様子(逆さまから見ると)」といった見立ての共有がありました。また、この民具には表面に模様のように見える部分がありますが、そこを「生き物」「人の横顔」などに見立てた方もいました。

次は、くじ引きで4つの島に分かれて見立てのデッサンをします。それぞれの島には複数の民具が並べられ、見る角度、位置によって見える民具も異なります。また、複数の民具の関係性も場所により変わってきます。基本的には初めにここ!と決めた場所からじっくり観察し、約30分ほど集中して描いていきました。

描き終わったあとは共有です。自分が描いていた位置にデッサンを置き、それぞれの島を回りながら、描いた場所から発表しました。
ある参加者は、細長い筒状の民具に注目しました。視点を低くして、のぞきこんで見ると向こう側がみえ、まるで望遠鏡のようです。

他にも、健康器具や赤ちゃんのゆりかご、キャリーケース、いろんなお菓子、ヘリコプター、調理器具、宇宙、などユニークな見立てが数多く共有されました。
最後ははじめに全員で描いた見立てのデッサンと民具を「民具これなーんだ?」展の会場に展示し、全員で記念撮影をして終了となりました。
イベントを通して、用途を知らなくても、自然と近いものを想像したり、本来の用途とは全く関係のない見立てが生まれたりする点は見立ての面白さの一つであると感じました。一人一人の視点が個性的であることはもちろんのこと、その視点や見立てが全く突拍子もないところからきているわけではなく、じっくりと民具を観察した結果として現れてくる、という点がとても面白く、だからこそ、共有の時間でさまざまな参加者の見方を知り、納得しあい、お互いに見方が深まっていったように感じました。
民具は、用途や歴史を知ることももちろん見方・楽しみ方の一つでありますが、それだけではなく、今回のように「見立て」で楽しんだり、自分なりの見方・感じ方で楽しむこともできる、とても奥深い世界です。
今回のイベントでは、用途を明かさないことも一つの肝で、わからないからこそ、じっくり観察し、想像し、固定概念にとらわれずに「見立て」を楽しんでいただけたのではないかと思います。イベントが終わった後も、ふとした時に、あの民具は何に使うものだったのだろう・・・?と思い出し、考えていただくきっかけになっていたら嬉しく思います。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。



