2017年9月4日(月)-10月1日(日)
未来の幽霊 ―長沢秀之展―
美術館 終了
画面を覆い尽くす無数の絵の具の点のタッチは、かつてそこに在った瞬間の輪郭をあいまいに溶かし、自らの立つ現在と過去を隔てる「距離」を浮かびあがらせる。画像を描いたキャンバスの上に、絵の具をランダムにおくこと。そこに、どこでもない、誰かの風景を見いだすこと。描くことの原初を見つめ続ける長沢秀之教授の作品を、最新作を中心に紹介する。
- 会期
- 2017年9月4日(月)-10月1日(日)
- 時間
- 10:00-18:00(土曜日、特別開館日は17:00閉館)
- 休館日
日曜日、祝日
※9月18日(月・祝)・23日(土・祝)、10月1日(日)は特別開館- 入館料
無料
- 会場
武蔵野美術大学美術館 展示室2・3、アトリウム1
- 主催
武蔵野美術大学 美術館・図書館
- 協力
武蔵野美術大学 油絵学科研究室
このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館では、「未来の幽霊 -長沢秀之展-」を開催いたします。
長沢秀之は、1947年埼玉県狭山市に生まれ、1968年に武蔵野美術大学造形学部産業デザイン学科(現・工芸工業デザイン学科)に入学しました。大学闘争の混乱の渦中、長沢はむしろ、そのような状況に或る種の自由を見出し、映画や絵画の制作に没頭します。
1986年には自身を代表する《風景》シリーズを発表します。ここでは、日本人が描く人物像にリアリティが感じられないことへの違和感が出発点となっており、長沢は、「“人間”を見えなくしてきた“自然”というものに“風景”を対置することによって“人間”を見ようとしてきた」と語ります。やがて“風景”は、画家の目の外ではなく、目の内部に在るものへと向かいます。これらを象徴するのが2006年の《メガミル》シリーズの発表です。「私が見るのではなく、目が見る」という言葉からは、長沢の一貫したテーマでもある“見ること”へのこだわりが伝わってきます。
今回展示する新作《未来の幽霊》は、その延長線上にあるものです。カメラという「機械の目」をとおして、過去の一瞬を切り取った「写真」を元にドローイングを描き、それが示す過去と描き手である自身の立つ現在との距離をキャンバス上で測っていく絵画手法は、記憶やおくゆきとともにイメージが呼び起こすさまざまな時間の振幅を想起させます。
また、長沢は2012年以降、本学の学生が主体となって活動する「School Art Project ムサビる!」への参加をきっかけに、学生や現地で出会った人々との交流の軌跡をドローイングと文章で紹介する《心霊教室 psychic room》や《対話 私が生まれたとき》の活動を展開しており、本展では《対話 私が生まれたとき》の新シリーズ、奄美編をご紹介します。
長沢が繰り返し用い、彼のなかで避けられない存在となりつつある「幽霊」、「心霊」という言葉には、時間軸の多義性が内包されています。本展はこの、不可視にして、私たちの未来でもある不明瞭な存在を、作品をとおして感じられる機会となることでしょう。
①アトリウム1:1986年より開始された、長沢秀之の代表作《風景》シリーズを展示します。
②展示室2:ドローイングによる3つのプロジェクトを、新作を中心に展示します(《心霊教室 psychic room》《対話 私が生まれたとき》《対話 私が生まれたとき 奄美編》)。
③展示室3:最新作の《未来の幽霊》をはじめ、未発表作品を含む、近作3シリーズを展示します(《PAINTING on Painting》《絵画のなかのあらゆる人物は亡霊である》《未来の幽霊》)。