2020年9月21日(月)-10月24日(土)
脇谷徹 ― 素描ということ
美術館 終了
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本学の造形教育の基礎を担う共通彫塑研究室で長年教鞭を執ってきた彫刻家、脇谷徹の自選展。脇谷の造形の中心には独自の「素描」の概念がある。対象の視覚的特徴や質感、立体的なヴォリュームをつかみ、同時にその実在性を浮かび上がらせることを指し、彫刻という行為もまた脇谷の言う「素描」の1つである。本展では、新作を含む彫刻約50点と平面作品約150点を俯瞰することで「素描」について見つめ直す。
- 会期
- 2020年9月21日(月)-10月24日(土)
- 時間
- 10:00-18:00(土曜日・祝日は17:00閉館)
- 休館日
日曜日
- 入館料
無料
- 会場
武蔵野美術大学美術館 展示室2・3、アトリウム1・2
- 主催
武蔵野美術大学 美術館・図書館
- 協力
武蔵野美術大学 共通彫塑研究室
- 監修
脇谷徹(武蔵野美術大学 共通彫塑研究室 教授)
※新型コロナウイルス感染症の今後の拡大状況に応じて会期が変更となる場合があります。
彫刻家・脇谷徹(武蔵野美術大学 共通彫塑研究室 教授)の最初期の作品から最新作に至るまで、各時代の彫刻作品約50点と、素描・絵画を中心とした平面作品約150点を紹介します。
200点以上の作品を一望することで、脇谷が制作においてただひたむきに目の前にある対象物と向き合い、視覚的特徴や質感・立体的なヴォリュームをつかみ、実在性を浮かび上がらせようとしてきたさまが見えてきます。ありのままの「かたち」をつかむ行為全般を「素描」と捉える脇谷は、平面作品も立体作品も同じ「素描」の発露だとしています。装飾を取り払い、必要最低限の描線で空間の中あるいは紙の上に「素描」された「かたち」を目の当たりにすると、普段私たちがいかに印象や概念に影響されて事物を認識しているかに改めて気付かされます。
本展を通して脇谷徹の真っ直ぐで力強い作品世界と、造形における「素描」という表現の本質にふれていただければ幸いです。 ※本展は脇谷徹教授の退任記念展として開催します。
見どころ
本展は、2つの空間で脇谷の作品を紹介します。彫刻作品が一斉に並ぶ最初の空間は、油絵具を一筆ずつキャンバスに載せていくのと同じように鉄の板を溶接して重ねていった《金属素描Ⅰ》といった20代の頃の作品から始まります。油絵を学んだ脇谷ならではの作品ですが、すでに関心が対象の「かたち」をどう捉えるかに向けられていることが見て取れます。続く《箱》や《扉》のシリーズでは、中の空洞や奥の空間など、直接は見えなくても確かに存在する空間を「かたち」に落とし込むことに挑んでいます。
これらの彫刻は、脇谷のライフワークである人物の彫像の発展の軌跡とも呼応しています。いくつもの頭像を作る中で、脇谷は人の顔が持つ吸引力を改めて実感し、人体のありのままの「かたち」を見ることの難しさに気付きます。そこで《TÔGAI》では、モデルとなった自身の息子の顔をあえて省略し、中が空洞である頭蓋の構造も容赦せずに描き出して、愚直なまでに目の前の「かたち」と対話しています。
今回展示する新作《扉を開ける》は、こうした試みをさらに一歩進めた作品です。人物が背を向けて扉の向こう側へ入っていく瞬間を捉えたこの作品では、この人物の顔や表情を読み取ることができません。しかし、それゆえに人体のフォルムが前面に押し出され、素の「かたち」を描き出す「素描」としての新たな展開が認められます。
会場のもう一方の空間には、素描や絵画など脇谷の平面作品が並びます。ここでは、「かたち」を捉える試みが線描によってなされています。平面・立体の区別なく「素描」の本質に迫ろうとする脇谷の姿勢から、見るとはどういうことか、改めて向き合うことができる展覧会です。
出品作家紹介
脇谷 徹(わきや・とおる):
1950年 香川県生まれ、武蔵野美術大学大学院 造形研究科油絵専攻修了。1975年に本学共通彫塑研究室助手となり、保田春彦教授・若林奮助教授の下で研鑽に励む。1977 年から「新制作協会展」(東京都美術館)で新作を発表し続け、1984年の第48 回と1985年の第49 回で新作家賞受賞。1990年から1年間、本学国際芸術都市田中記念アトリエ派遣研究員としてパリに滞在したのち、1991年から本学共通彫塑研究室の助教授、1998年からは教授として多くの学生の指導にあたる。その一方で精力的に作家活動も続け、2008年の「阪神甲子園球場リニューアル記念レリーフ」などを制作。