2020年11月16日(月)-12月19日(土)
十時啓悦 ― 樹木と漆と暮らし
美術館 終了
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木漆工芸家・十時啓悦(武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科 教授)の新作と近作を中心に、十時の現在の手仕事を紹介します。
木漆工芸には木材を加工して成形する「素地作り」と表面を塗装する「漆塗り」の工程がありますが、十時は完成に至るまでの作業を一貫して自身で行っています。唯一無二の芸術作品と、大量生産される工業製品の間にあるような十時の手仕事の根底には、造形への深いこだわりがあります。そして飽きずに毎日ずっと使えること、工芸品でありながら多くの人が手に取れることというように、一見相反することをかなえるためのバランスを追求する中で生まれたものでもあります。
椀、皿、盆、酒器、花器、家具––実際に手にとった時の感触や日常の中で愛用される風景に思いをめぐらせながら、十時の手仕事の世界をお楽しみください。
- 会期
- 2020年11月16日(月)-12月19日(土)
- 時間
- 10:00-18:00(土曜日、11月23日は17:00閉館)
- 休館日
日曜日
- 入館料
無料
- 会場
武蔵野美術大学美術館 展示室2、アトリウム1
- 主催
武蔵野美術大学 美術館・図書館
- 協力
武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科研究室
- 監修
十時啓悦(武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科 教授)
※新型コロナウイルス感染症の今後の拡大状況に応じて会期が変更となる場合があります。
見どころ
本展では、暮らしの中の漆器、主に椀、盆、皿、菓子鉢、酒器などの食器を中心に、十時の新作と近作を紹介します。制作にあたって十時は現代の暮らしの中で生きるものを作りたいと常に意識し、毎日の生活を彩る実用品として手に取りやすくするために高価な素材は使用せず、無駄のない手数とシンプルな仕上げで作品を制作しています。一方で、それぞれの器に個性を持たせて「飽きさせない」ようにしています。
伝統工芸における技法を踏襲しながらも、十時が模索してきた自身の表現がこうした個性につながっています。十時がよく用いる技法の一つ、「根来塗」では黒漆の上に朱漆塗りを施し、表面の朱漆を磨くことで中の黒漆を所々に露出させます。ここに研磨の一手間を加えることで、十時は使い込んだ漆器に見られるような漆の掠れを表現します。別の「錆付け」という技法では、通常は砥の粉という土の粉を混ぜた液状の生漆を木製の素地に塗って下地にしますが、十時は本来であれば表に出ることのないこの下地を、あえて風合いのある肌として作品に生かしています。
十時のものづくりは、多くの人が長い間、日常の中で愛用できるようにと、伝統技法の追求という枠を越えて、木と漆が織りなす“もの”としての「用の美」を追求してきました。本展では、木と漆という自然素材が見せる表情の豊かさ、暮らしに彩りを添える調度品としての魅力を紹介すると同時に、作品の制作方法や工程についての解説展示によって、十時特有の技法を紐解きます。
※本展は十時啓悦教授の退任記念展として開催します。また、実際の展示作品と画像は異なる場合があります。
出品作家紹介
十時 啓悦(ととき・あきよし)
1950年 大阪府豊中市生まれ。1973年 武蔵野美術大学 造形学部産業デザイン学科工芸工業デザイン専攻卒業。1975年 東京藝術大学大学院 美術研究科 漆芸専攻修了後に漆芸家の野田行作に師事。1977年に独立し、木漆工芸家として活動開始。1977年の第18回「日本クラフト展」、1981年の第22回同展で優秀賞受賞など、国内外で積極的に展覧会に出展する。その一方で、1986年 武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科の専任講師を経て、1994年からは教授として多くの学生の指導にあたる。国際交流基金の助成を受けた2015年のアジア漆工芸学術支援事業のカンボジアでの調査への参加など、漆文化の研究も続けている。また、東京都町田市の旧白洲邸 武相荘では、1995年に白洲正子から制作を依頼された家具が展示されている。