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「美大生におすすめの本20選」Vol.3:水上泰財教授

掲載日:2020年5月21日(木)

図書館

ムサビの先生方がお勧めする”美大生なら読んでおいてほしい本”、
第3回目は、油絵学科研究室の水上泰材(みずかみ たいざい)先生です。

水上泰財教授(油絵学科)

水上泰財教授(油絵学科)

 こんにちは、油絵学科の水上です。コロナ自粛の影響で大学の環境を利用できず、大変な困難を強いられていることと想像しています。私も慣れないパソコンに向き合いながら、人が十年掛かって身につけていくような操作を三時間ほどで教えられ、寝れば次の日には忘れているといった哀しい毎日です。
 それでも、このような時だからこそ自分の時間が作れ、忙しかった自分を見つめる良い機会だと感じている人も少なからずいるのではないでしょうか。良書に出会ったり、見たい画集を見たいだけ見ることができたとき、私はとてつもない幸福を感じますし、その本を通して自分の在りようを反省し、自分の仕事を考える手助けにもしています。
 ここにあげた20冊の本は、どれも私が面白いと感じた本ですが、好きな小説はたくさんありすぎるので作家名をあげます。北杜夫、開高健、遠藤周作、司馬遼太郎などがそれですが、好きな画集もたくさんあって、是非見てほしいのはジォット、ブリューゲル、ボス、長谷川等伯、曾我蕭白、ゴヤ、ルソー、ブラウアー(ウィーン幻想派)、ベンシャーン、エゴンシーレ、エドワードホッパー、ルシアンフロイトなどの画集です。漫画はつげ義春、手塚治虫、谷口ジロー、横山祐一などでしょうか。漫画以外のものはほぼ図書館を通して手にとることができるので、大いに活用してください。
 この機会に自分の時間を充分楽しんで、これらの本とともにそれぞれのこれからを想像して頂ければ幸いに思います。

〈水上先生のおすすめ本〉

芸術の意味

ハーバート・リード著、滝口修造訳, みすず書房, 1966

社会が何かしらの困難を感じる時、「芸術は人の役に立っているのだろうか」とか「自分の表現に意味があるのだろうか」とかと切実に考えるときがある。そんな時に美術を志す人たちに読んでもらいたい、大きな勇気と教養を与えてくれる一冊。

西洋の比例 : ピラミッドからモダン・アートまで

柳亮著, 美術出版社, 2012

一本の線を引く時、画面上のどこに引けば良いのか迷うときがある。そのようなときに数字や数式を使って、その場所を決められることは余計な悩みが省かれ有り難いものだ。古来からある造形物の美を黄金分割を通して解説し、美の謎に迫ろうとした一冊。

忘れられた日本人

宮本常一著, 岩波書店, 1984

旅する民俗学者、宮本常一は本学の先生でもあった。我々はどこから来たのかなどと考えるとき必見の、日本人のルーツを探る一冊。この本は代表作であるが、他にもさまざまな本が出版されているので、自分で調べて読んでもらいたい。

ブリューゲル

土方定一著, 美術出版社, 1963

ブリューゲルやボスの絵を飽きることなく見ていると、この人たちの絵はどのような時代背景から生まれたのだろうと考えるときがある。評論家土方定一が現地を訊ねながら思考し、想像したブリューゲルやボスの人間像に迫ろうとした一冊。

ヒエロニムス・ボスの図像学 : 阿呆と楽園に見る中世

神原正明著, 人文書院, 1997

《阿呆と楽園に見る中世》という副題通り、中世の時代背景を追いかけつつ、ボスの代表作である《阿呆船》《聖アントニウスの誘惑》《快楽の園》《放蕩息子》の図像的意味や、その象徴を解説した一冊。画家を志す人にはモチーフのヒントになるかも。

ブリューゲルへの旅

中野孝次著, 河出書房新社, 1976

ドイツ文学専門の学者で翻訳家でもあった中野孝次がブリューゲルに魅せられ、ウィーン(美術史美術館にはブリューゲルの部屋があり、彼の有名な作品の多くはここにある)において思索を重ねた独自のブリューゲル論。エッセイとしても充分楽しめる一冊。

ゴッホの手紙 上・中・下

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ著、硲伊之助訳, 岩波書店, 〔上〕1955 ;〔中〕1961 ;〔下〕1970

言わずと知れたゴッホが友人と弟に宛てた手紙。日本人の我々が恥ずかしくなるくらいに日本の文化と文化人を尊敬していたのが随所でわかる。弟に金の催促をしながらも、独自の絵画論をその手紙の中で展開して、まさに画家ゴッホの生き様が凝縮されている。

ジャコメッティとともに

矢内原伊作著, 筑摩書房, 1969

ジャコメッティのモデルでもあった矢内原が、ジャコメッティとともに暮らした期間の記録。誰も知らなかった彫刻家の仕事の流儀、彫刻家の思考の仕方、彫刻家の私生活が巨匠との生活を通して詳らかにされている。美術家必見の一冊。

今日の芸術 : 時代を創造するものは誰か

岡本太郎著, 光文社, 1999

読み出したら止まらない本。私が学生時代に芸術祭に岡本太郎が来て、先生方を罵倒して帰ったが、今その立場に自分がなると頭を抱えたくなる一冊でもある。しかしながら、岡本の真意は自由とは何かについて語られたものであり、間違いなく名著である。

全東洋街道 上・下

藤原新也著, 集英社, 〔上〕1982 ;〔下〕1983

写真家藤原信也がアジアの西の果てトルコから東の果ての日本までを旅したときのエッセイと写真。彼は《インド放浪》などが有名で旅の随筆家とも言えると思う。西洋と東洋のものの考え方の違いを随所に挟まれた写真とともに感じることができる。

独りの時間 : 山口薫詩画集

山口薫著, 求龍堂, 1999

人前で喋ることが苦手で、酒を呑んで芸大で講評したとも言われる画家山口薫。彼の絵に対する誠実さと勇気、人に対するナイーブさが入り交じった詩画集。このような人と一緒に絵を学べた学生は幸福だと思う。

生きる術としての哲学 : 小田実最後の講義

小田実著、飯田裕康・高草木光一編, 岩波書店, 2007

ベトナムに平和を!略してベ平連などの市民運動を次々と組織し、その中心的存在だった小田実。彼の慶応大学での連続講義をおさめた一冊。彼は、私の好きな作家の開高健とも親交があり数多くの出版物がある。この本は、講義であるため学生との質問のやりとりも面白い。

私の西洋美術巡礼

徐京植著, みすず書房, 1991

磔刑、斬首、拷問などなど。作者は、ヨーロッパの美術館でそのようなキリスト教の図像に激しい衝撃を受けたと言う。在日朝鮮人で人権活動家でもある作者が自らの視点で「絵画とは」「人間とは」何かを掘り下げた一冊。隣の東経大の先生でもある。

西洋絵画の主題物語 : 1 聖書編

諸川春樹監修, 美術出版社, 1997

例えば、旧約聖書にある楽園追放やキリストの受難の一つでもあるユダの裏切り。それらの一場面を画家たちはどのような図像で描いてきたかが一目で分かる一冊。私のような無神論者であれば、聖書に何が書かれているかの勉強にもなる。

西洋絵画の主題物語 : 2 神話編

諸川春樹監修, 美術出版社, 1997

上に同じで、神話ごとにカテゴリーに分けられ、画家がそれらをどのように表現したかが一目で分かる一冊。この「西洋絵画の主題物語」は、数多くの絵が掲載されているので飽きることがない。

幻想の画廊から

澁澤龍彦著, 青土社, 1998

昔の美術評論家は独自の視点があり、この本の作者である渋沢龍彦をはじめ、土方定一、滝口修造、坂崎乙郎などは、その惚れ込んだ絵に対するのめり込み方が半端ではない。時代の違いもあるのだが、このような評論家の本は面白いし、何より信用できるのである。

イメージの心理学 : 心像論のすべて

河合隼雄著, 青土社, 1991

ユングの弟子であった心理学者の河合隼雄が、個々の持つイメージとは何かを探りながら、それを芸術や宗教、創造などいろいろな角度から論じている一冊。ユングの心理学を勉強したい人の入り口にある本を数多く書いた学者だと思う。

天、共に在り : アフガニスタン三十年の闘い

中村哲著, NHK出版, 2013

著者は医者であり、アフガニスタンで医療従事をしながらとてつもない灌漑事業をし、荒れ果てたかの地の一部を農作地に変えた。この本は、彼のアフガニスタンでの30年の記録であり、憲法改正の動きもある現在、本当の安全保障とは何かを教えてくれる一冊。

陰翳礼讃 *

谷崎潤一郎著, 中央公論社, 1995

『痴人の愛』『春琴抄』などを書いた作家谷崎潤一郎が日本家屋の持つ影の深さや、その味わいなどについて書いた随筆。読みながら日本の風土が持つ四季折々の表情や、独特な湿度のようなものを感じる一冊だと思う。

絵画組成 : 絵具が語りはじめるとき

武蔵野美術大学油絵学科研究室編, 武蔵野美術大学出版局, 2019

油絵学科の組成室のスタッフが中心となって書いた技法書。古典技法や混合技法など学内における組成室での授業がリアルに再現された一冊。現在の油絵学科の専任教員も全員がそれぞれの表現論を執筆している。

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