加藤徹志
美術館・図書館
言わずと知れた旅人のバイブル的名著。
平野甲賀による力強い描き文字の装丁が、より一層旅心を誘う。インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗合バスのみで旅をする著者自身の紀行となっており、最初に刊行されてから30年近く経過した今もなお描かれる情景は色あせていない。
著者は旅に出る年齢として「26歳」に拘ったが、まだそこまで偏った固定観念がなく、柔軟に見聞を広げられるという観点での年齢設定だったのだろうと納得がいく。
旅から学ぶことは多い。若いうちによい旅を。
篠塚千惠子
造形文化・美学美術史研究室
現役小説家が東京大学で世界文学を論じた講義録である。テーマは、近代小説がどのように誕生し、それ以前の物語とどう違うのか、漢文の翻訳から始まった日本文学の歴史とは、言語とは、翻訳とは・・・。短編小説の味読の仕方を実践し、見事な要約と分析によって長編小説の神髄を解き明かす。読者はその解説の妙技の魔法にかかり、本書に出てくる小説を読む(ないし再読する)行為に駆り立てられ、そこから新しき現実を発見するだろう。
出版者
有限会社ビッグイシュー日本
出版年
日本では2003年に創刊
毎月1日&15日発売
小澤智子
言語文化研究室
300円のうち、160円が販売者の収入に。ホームレスの仕事を作り自立を応援する雑誌。表紙は世界的なセレブが飾り、誌面ではホームレスから有名人までがそれぞれの視点で多様な人生観や社会問題について語る。成熟した社会の真の在り様が具体的に垣間見えると思う。市民社会をリードするオピニオン誌としての意外性と知的な刺激が私にとっては心地よい。みなさんにとってはいかがでしょうか。(現在、国分寺駅前でも販売中。)