2019年8月9日(金)-9月21日(土)
くらしの造形20
「手のかたち・手のちから」
美術館 終了
「手」の役割は人類誕生から今まで多様に展開したが、その重要性は変わりない。本学教養文化・学芸員課程教授である神野善治の調査チームは8年にわたり、福井県若狭地方の三方石観世音に奉納された6万点余の「手足形」の調査を行った。その造形の魅力を紹介しつつ、人間のくらしを支える「手」の働きが道具に展開するあり方をとらえ直す。
- 会期
- 2019年8月9日(金)-9月21日(土)
- 時間
- 10:00-18:00(土曜日、特別開館日は17:00閉館)
- 休館日
日曜日、祝日
※8月18日(日)、9月16日(月・祝)は特別開館- 入館料
無料
- 会場
武蔵野美術大学美術館 展示室1・2、アトリウム1
- 主催
武蔵野美術大学 美術館・図書館
- 協力
三方石観世音、福井県教育委員会、国立民族学博物館、国立文楽劇場、電気通信大学、阿波木偶箱まわし保存会、ヤマト運輸ねぶた実行委員会、ねぶた愛好会
- 監修
神野善治(武蔵野美術大学 教養文化・学芸員課程研究室教授)
- 助成
公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
本学教養文化・学芸員課程教授である神野善治の調査チームは8 年にわたり、福井県若狭地方の三方石観世音のお堂に奉納されていた6万点余りの「お手足形※」の調査を行ってきました。
調査により、現代に残されたお手足形の年代や信仰されていた地域などが明らかになり、文政・天保期(1818 年~1845 年)に奉納された歴史的に貴重な資料などが発見されました。
本展では、お手足形の圧倒的な迫力と造形の魅力を紹介すると共に、人々の暮らしの基礎となった「手」のかたち(姿)とちから(能力)の展開を改めて考えます。アトリウムの広い展示空間では約1500 点のお手足形を展示します。お手足形を高さ2m 以上に積み上げ、お堂にあった様子を再現するほか、壁一面に固定するなど、複数の展示方法で紹介し多様な形態、種類をご覧いただきます。中には仏師が製作したと思われる精巧なもの、関節が動くもの、枝木の形を活かしたものもあります。
手と手の延長である道具との関係について問うため、手の動作を「はさむ」「たたく」「すくう」などに分類し、それに対応する道具の種類について紹介します。本学教授であった民俗学者・宮本常一(1907 年~1981 年)の指導により収集された民具(本学民俗資料室所蔵)を用い、手の動作がいかに道具に具体化されているかを捉え直します。
また、日本の祭りを代表する青森のねぶたの手、人形浄瑠璃の操り人形の手を展示し、祭礼行事、伝統芸能における手の形から、人々が手をどのように表現してきたかを読み解きます。そのほかにイルカ、モグラ、コアラ、サルなどの手の骨格標本を用いて、解剖学の視点から手の進化について問うなど、人と手の関係を様々な視点から考えます。
※お手足形とは手足を象った木製の奉納物です。祈願者が、奉納されている左右のお手足形のうち病んでいる手足と同じ方を借りて帰り、お経を唱えて病気回復を祈願します。回復後はお手足形を返し、新しいものを奉納する習慣があります。
1. 手と祈り
福井県若狭地方の三方石観世音の調査で明らかになった「お手足形」6万点余りのうち約1500 点を展示します。江戸時代以来、民衆が自ら作り出した造形の迫力と魅力を紹介します。中には仏師が製作したと思われる精巧なもの、関節が動くもの、枝木の形を活かしたもの、馬の足、頭部、絵馬などもあります。
2. 手の造形
人形の手から、手の表現をみるため、人形浄瑠璃で使用される操り人形の手(3 点)、青森のねぶたの手(8 点)、をとりあげます。また、青森ねぶた祭の映像も流します。
3. 手の進化
解剖学の視点から、ヒトが獲得した手の進化について紹介します。イルカ、モグラ、コアラ、イヌ、イノシシ、ホッキョクグマ、コウモリ、サルの骨格標本(計12 点)と比較し、「前肢」を発達させた人類の手のあり方を確認します。
4. 手と道具
手の動作を「はさむ」「たたく」「すくう」などに分類し、それに対応する道具の種類について、民具(300 点以上)を用いて紹介し、手の動作がいかに道具に具体化されているかを捉え直します。
5. 手の未来
ヒトは手でつくった物を使い、今日まで生きてきました。将来的にヒトの手は、どのような発展をするのでしょうか。手が使えなくなった際に脳からの信号で手を動かす筋電義手から、手の未来について考えてみましょう。