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「美大生におすすめの本20選」Vol.10:長谷川浩己教授

掲載日:2021年9月9日(木)

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ムサビの先生方がお勧めする”美大生なら読んでおいてほしい本”、
第10回目は、建築学科研究室の長谷川浩己先生です。

長谷川浩己教授(建築学科)

長谷川浩己教授(建築学科)

【長谷川先生の書棚】

長谷川先生の書棚1

長谷川先生の書棚2

〈長谷川先生のおすすめ本〉

「人間の土地」 サン・テグジュペリ著

「星の王子さま」で有名な作家ですが、自身パイロットとしてヨーロッパーアフリカ間などを飛び、事故で亡くなりました。読んだのは中学校の頃ですが、初めて世界を俯瞰してみるということを学んだ気がします。単に物理的な意味ではなくて、私たちが地球上に存在している儚い共同体だということへの気づきです。

三木成夫著, 河出書房新社, 2013

著者は東京芸大で解剖学、発生学を教えていた人。人体には5億年の進化の歴史が刻まれていて地球上のほぼ全ての物質からなり、一人ひとりが小さな星だと言います。またたとえば腕と舌は同じ器官から発達してきたものでいわば兄弟みたいなもの。だから赤ちゃんは触って舐めて世界を認知し始める、など。彼のいう心とは思考ではなくて感覚として感じるもの。嬉しい、楽しい、悲しいとかは内臓感覚ではらわたにこそ心が宿っていると説いていきます。一読すると、自分の身体観が一変します。

イーフー・トゥアン著, 山本浩訳, 筑摩書房, 1988

ランドスケープデザインを学ぶ学生にとってはマストの本。しかし、多くの美大生にとってもためになる本だと思います。私たちはどのように空間を認識し、なぜ特定の空間に愛着を感じるのか。生まれ育った環境がどのようにその人の世界観を形成しているのか。私たちは自ずと固有の視線で世界を認識している。普遍性と固有性についての議論は、そのまま私たちが繰り出す表現にも地続きだと思います。

グレゴリー・ベイトソン著, 佐藤良明訳, 思索社, 〔上〕1986 ; 〔下〕1987

ちょうど皆さんくらいの時に読んで多大な影響を受けた本です。実に様々な領域を横断しながら思索を続け、「それはなぜそうなのか」、「それがそうであるとなぜ認識するのか」、「そう思うあなたはなんなのか」、数えきれない問いの連続です。僕はその中にあって、彼がいう「結び合わせるパターン」という言葉がいまだに深く心に残っています。

澁澤龍彦著, 白水社, 1988

彼の本は見つかれば必ず買って読んだほど大好きな作家ですが、これは最初に本屋で見つけた文庫本です。彼はオブジェ好き。もちろん、ものとしてのオブジェも好きでしたが、それ以上に世界の中にある特別な意味、イメージとしてのオブジェに強く惹かれていたように思います。一つのイメージから次のイメージへと横滑りを始め、筆が走っていきます。そうして僕らは澁澤宇宙の中に連れ出されます。

※ 当館では白水社刊 [新編ビブリオテカ澁澤龍彦]を紹介

真木悠介著, 筑摩書房, 1977

著名な社会学者ですが、たまにこの名前で著書を書いています。この本はかつて一世を風靡したカルロス・カスタネダの「呪術師と私」がベースになっていて、メキシコの伝統的なシャーマンのもと、植物によってトリップしていわゆるトランスパーソナル心理学につながる本と言えます。全く別の世界に連れて行かれてゆくことで、自分が今まで世界だと思っていた基盤が揺らぎ始める。世界は思っている以上に広大で無限なのかも知れない。タイトルの意味は本を読めばわかります。

童夢

大友克洋著, 双葉社, 1983

個人的にはAKIRA を超える作品。初期の頃から日常に突然出現する歪みというかクレバスみたいなものがちょっとコメディっぽく描かれたものが多かったけど、これはコメディ抜きのホラーなのかな?ストーリーも面白いし、画面やコマ割りがすごく空間を感じさせます。こういう緻密な作画をストーリー追いながら流して読んでいくのが申し訳ないくらい。「こども」というテーマはこのあとAKIRA に引き継がれていきます。

鷲田清一著, TBSブリタニカ, 1999

表現することばかり主張してもコミュニケーションは成立しません。受け取ること、相手の言葉だけではなくて仕草や表情、感情を「聴き取る」ことがとても大切なことです。アートにしてもデザインにしてもそれは同じではないでしょうか。一見受け身のようですが、「聴く」ことは実は積極的な能動的な態度なのです。著者はこれを臨床哲学という名前で呼んでいますが、表現者にこそ読んでもらいたい本です。

市川浩著, 青土社, 1997

VRとかいろいろ言われていますが、僕たちは身体を持って(それを通じて)世界を認識していることもまた事実です。前と後ろ、上と下、などの感覚から聖と俗、天国と地獄、手前と奥など様々な概念が成立しています。自分という認識ですら、相手があって初めて自分という存在を確認することができる。彼はこれを「間身体」と呼んでいますが、まさに僕たちは人ではなくて人間なのだということです。空間論に興味ある学生は参考になると思います。

加藤陽子著, 朝日出版社, 2009

学術会議のメンバーリストから外されたことで有名になった著者です。この本読んでもなぜ外されたのか皆目検討がつきませんが、なぜ日本人は戦争という道を選んだのか、高校での講義と質疑応答からなる本はとても読みやすいと同時に、国とは何か、国民とは何か、様々に考えさせられます。オリンピックもそうですが、なぜあそこまで国という単位に熱狂するのか、なぜ国のためには殺人も許容されるのか、世間の空気に流されないためにも是非読んでみてください。

百日紅 上・下

杉浦日向子著, 筑摩書房, 1986

若くして早世されてしまいましたが、江戸時代から生きていたのではないかと言われるくらい江戸の空気感まで描き出す稀有な漫画家でした。この本の主人公は葛飾北斎とその娘、お栄です。天才北斎の日常が江戸の町を舞台に描かれていて、シンプルな線の描写が心地いい。童夢とは真逆だけど、どちらも絵とストーリーが絶妙にマッチしています。

長谷川浩己著, 丸善出版, 2017

自分の本ですみません。職業がランドスケープ・アーキテクトなので風景についていつも考えてきました。風景という巨大な存在、僕自身がその一部なのに、部分が全体をデザインすることはあり得るのだろうか?そういうことをずっと考えながら仕事をしています。世界は風景として今この瞬間目の前に存在しているけれど、それをデザインするというにはおこがましく、畏れを持ってさわりにいく。そういう気持ちを込めて、今までの思考の経緯をこの本にまとめました。

「桜の森の満開の下」 坂口安吾著

『ちくま日本文学 009 ; 坂口安吾』(筑摩書房, 2008) 所収
ランドスケープ的な小説というと、真っ先にこの作品が浮かんできます。文字を追うだけでまざまざとその風景が浮かび上がってくる、そういう本はそんなにないかなと思いますが、僕にとってはいまだに勝手にそのシーンが頭にこびりついています。桜の美しさと恐ろしさ、日本人なら誰もが感じるこの感覚はこの民族特有なのか、またはひょっとしてこの本がそれを植え付けてしまったのか?

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