村井威史
美術館・図書館
本書の表紙図版は「時間軸変形地図」。名古屋駅を起点にした交通所要時間による日本列島の図像化である。交通網の発達した都市は引き寄せられ、僻地は遠ざかる。時間を軸にして可視化すると、見慣れた地図や地球儀は容赦なくゆがみ、凹んでしまう――。
二次元のなかに時間や空間、はたまた味覚や臭覚をも表現する試み。物事を多視点的思考で捉えることで新たな世界がみえてくる。傑作ダイアグラム作品群の原理を、デザイナー自ら解き明かす奇跡的な一冊。図版美麗・高精細!
宮原一郎
美術館・図書館
国連に認められていないながらも独自通貨を流通させ、先進国も顔負けの民主的な統治を実現させているソマリランド。その地を旅しながら様々な人と関係を築いてゆく記録が、その楽しさや苛立ちなどとともに活き活きと描かれている。泥臭くも爽快な「国際コミュニケーション」の実践の記録が、知らない場所への旅へと誘惑する。
山口 拡
美術館・図書館(民俗資料室)
男性に縁のない「枯れた」女性を「干物女」というそうだが、当の干物には異論があるに違いない。干物はあえて「枯れる」=水分を抜くことで、旨味を凝縮し保存性を増した、優れた食品なのだと。
しかし、干物作りは天候や環境に左右される、難しいものである。ゆえに、本書に収められた風景も、徐々にその姿を消しつつあるという。世界遺産に認定された「和食」の豊かさは、こうした足元の文化が担っていることを忘れてはならない。