制作者
セミフ・カプランオール
制作年
2007年
稲垣遊
日本画学科研究室
助手
舞台となっているトルコの町並みや自然は変化に富み、それぞれのシーンは人物を配した風景画のように慎重に切り取られている。青い壁面に囲まれた懐古的な調度品を楽しめる室内風景も魅力的だ。朝は薄暗く、夜はしっかりと暗い画面はときに状況把握にも時間がかかるが、ゆっくりとした映画の流れはそれを許してくれる。音楽もなく、物語は淡々と進行する。それぞれの場面に意味を感じられるので、じっくりと向き合える映画だと思う。
制作者
プリート・パルン
制作年
1987年
木村美佐子
美術館・図書館
イメージライブラリー
独特のグラフィックで不条理な世界を描き上げるエストニアのプリート・パルン監督が、マネの絵画をモチーフに作成したアニメーション。社会主義体制を象徴する暗い町並みの中に交錯する4人の男女の日常。陰鬱な空気を潜り抜け集結した水辺で、女たちは惜しげなく服を脱ぎ、男たちは草上でくつろぐ。「草上の昼食」が完成に至るまでの展開は実に奔放で爽快。それこそがマネへの賛辞と言えるだろう。
佐久間保明
教養文化研究室
本書は終戦の4箇月前にフィリピンで戦死した若者を追跡した経験の報告。詩と漫画が大好きだったタケウチコウゾウを同年代の著者が自分なりに追いかけてみたもの。きびしい時局の戦時下にこのような魂の持ち主が生きていたのは驚異だが、対象と著者との絶妙な組み合わせで70年前の稀有な感受性がよみがえった。これまで知る人ぞ知ると言われてきた浩三が次第に知られてゆくことが喜ばしい。