表紙画像は紀伊国屋書店BookWebのものを使用しています。
稲垣遊
日本画学科研究室
助手
絵画を出発点としたさまざまなアートの読み書き(鑑賞)について、その足がかりとなるキーワードを列挙し、具体例を示しながら解説している。美大の学生・教職員という立場でありながら美術の歴史や思想に疎かったりすると、自分や他人の作品について語ることにプレッシャーを感じがちだが(私のことですが)、本書ではまずは手持ちの言葉で、自分なりの角度と深さを持って作品に踏み込んでいくことが目指されている。
菊地智美
美術館・図書館
人間はなぜ1対1.6180339887…という中途半端な値を黄金比とし、好み美しいと感じるのか。この本を読み進めると、自然界での黄金比・黄金角の話題が出てくる。例えば、今までの葉が出た場所を避け空いている「ちょうどよい」場所を選んで葉を伸ばす様子や、ひまわりの種の並びの規則性が、実は黄金角と関係しているというのである。永い進化の歴史を通して生物が身に着けたこの「ちょうどよさ」に「黄金」という名がついたのも納得する。
村井威史
美術館・図書館
南方熊楠についてはこれまでもすぐれた論考や研究がなされてきたが、著作や原資料の難解さからいまだに解明されていない謎も多い。本書は近年の網羅的な調査・研究で明らかになった情報を事典体に整理し、多角的視野から論じた研究書である。今をさかのぼること百年、すでにエコロジーの概念に着眼していた熊楠。その思想と活動、生涯を正しく理解することは、3.11を経験した我々にとって新しい価値観を見出す手掛かりとなるだろう。