制作者
松江哲明
制作年
2009年
木村美佐子
美術館・図書館
イメージライブラリー
74分ワンカットで、ミュージシャン前野健太が吉祥寺の街を歌い歩く姿を捉える。タイトル通りの音楽映画ではあるのだが、それは街の臭気をたっぷりと吸い上げてドキュメンタリーになり、徒歩の運動を伴ってひとつの街のなかで終結するささやかなロードムービーになる。さらに映画はインタビュアーでもある松江監督自身の人生をも引き寄せて、小さな男の子が登場する、井の頭公園でのちょっと奇跡的なシーンで幕を閉じる。それは、もしヤラセであったとしてももう構わない、と思わせてしまうほどの磁力を以て、ほろりと涙させてくれる。
制作者
ガス・ヴァン・サント
制作年
2003年
狩野志歩
美術館・図書館
イメージライブラリー
アメリカの、とある高校で起きた銃乱射事件を複数の生徒達の視点を交差させながら描く。教室で静かに涙を流す少年、ダイエットの為にトイレでランチを吐く女の子達、通販で簡単に銃を手に入れてしまう2人の少年達。それぞれに抱える問題や事件の真相は宙に浮いたまま、いつもの生活を送る彼等の背中をカメラは淡々と追いかける。幸せそうなカップルにも友達のいない少女にも等しく訪れる死を前に、淡い色彩が背景に滲むシャロー・フォーカス*によって切り取られるありふれた日常が儚くも美しい。
*背景など画面の一部をぼかす撮影技法
著者
高村光雲
出版者
岩波文庫
出版年
1995年
鈴木久雄
共通彫塑研究室
明治大正期の木彫家、高村光雲の語りを、長男の高村光太郎と田村松魚が聞き書きした『光雲回顧談』の主要部分が文庫化されたもの。
幕末・明治の世相風俗と、維新に戸惑いつつも自身の木彫を切り開いていく木彫師光雲の有様が生き生きと鮮明に描写される。戦後が遠くなるにつれ近くなる幕末と明治期をあらためて顧みるべき今、必読の面白い本である。